# ギフップさんのインタビューの前に。
2019年4月20日。
その日は、よく晴れて、長良川沿いには涼しい風が通る日だった。
岐阜市長良にあって、いずれ「&n(アンドン)」と呼ばれる木材倉庫の南角で、その人は待っていた。
黒のジャケットを羽織り、ストレートの髪は清潔にまとめられ、遠目でも折り目正しさを感じさせる佇まい。こちらを見て、柳のような物腰で会釈をしてくれた。
私はといえば、手を振りつつ道路を渡り挨拶を交わしながら、その人の細い首にかかっている、見るからに重量のありそうなカメラをみて、とっさに思った。
(あ、やばい)
この日は、翌月に開業を控えた木材倉庫の壁塗りのスケジュールで、その人とは、その合間での面会だった。そのせいで、この日の私はといえば、もっぱら肉体労働の心算で、メガネに作業着、くたびれ始めたヘビロテのスニーカー姿で、ニット帽の中の髪はボッサボサだ。
(取材って私も写真撮られるんかな?)
このときになって、ようやく状況を読みはじめた。
元は、ここのところ長良エリアで盛り上がる地域活性化の活動を取材いただくという話だった。私もそれに関わっていることもあり、メンバーの代理のようなスタンスで臨んだのだが、考えてみれば、これが、私人生において初めての、記者さんとの対面マンツーマンインタビューなのだ。
そう意識した瞬間、身体のどこかにある歯車がゴトンと音を立てて動き始めた。
(いやいや、今日は建物の写真を撮るためなのかもしれないし)
そんな言葉で気を取り直すも束の間、
(もしやこれから世の中に広く出る話をするんだったっけ...)
(それFBで投稿してるのとなにがちがうんだったかな...)
(今日のインタビューは何時間の予定だったっけ)
(あれ、今日ちょっと遅刻しちゃったかな)
(持って来なきゃいけないものあったかな)
それはもう些末も些末な心配事から発生したモヤモヤが、私の脳裏をのべつまくなく去来する。
私の全身の血液は、一気に脳みそへ吸い上げられた。
身体中の末端という末端からは、血の気がひいて、痺れてきた。
(やっぱ、やばいかも。)
その日このとき、唯一の仕事道具となるだろう舌がもつれては、出てくる話も出てこなくなる・・・と焦った心配性の"小さい私"が、身体中でアラームを鳴らしながら駆け巡る。そのけたたましいサインを受け取った"私の言語野"は、急いで"私の口先"へフィードバックする。
関:「もしやったら、川の方、行きません?」
記者さん:「…あ、ハイ。(?)」
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もし「よ・か・っ・た・ら」である。
しょっぱなのKが無声化する。ひさびさにやってきた緊張の証だ。
しかし、それに付き合ってくれる記者さん。
私の中で、ここしばらく昼寝をしていた"緊張という名のライオン"が目を覚ましそうな局面なのだ。
『緊張はともだち…、金獅子はともだち…K..K..K..』
Kの発音練習も兼ね、自分に言い聞かせながら、数年寝太郎の金獅子にまだまどろみ続けてもらうため、待ち合わせたインタビュー場所から、そそくさときびすを返す。
わずか徒歩50秒ほどで絶景ポイントへ到達すると、金獅子の"飼い主"にもようやく深呼吸するだけの余裕ができる。
そう、この日は、本当によく晴れて、この長良川沿いには涼しい風が通る日だった。
さっきあれほど身体中をアラーム鳴らして駆け巡った"小さい私"も、ここにきて落ち着きを取り戻し、ひと仕事終えたとばかりに、ほっと一息ついている。
あ、そうだ、水筒に熱いコーヒーを入れてきていたんだった。コップも持ってきた。
そして目の前には、私の話を本気で聞いてくれるという人がいる。
これだけの好条件が揃っていて、話が長くならないわけがない。
そう状況判断をしたとたん、
"心配性の小さい私"に急かされることのなくなった"私の言語野"が、ご近所仲間の"私の感覚野"と"私の前頭連合野"を携え徒党を組み、文字通り時間を忘れて、暴れまわることになった。
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その様子を、ギフップさんが存分に捉え、文字に起こしてくださいました。
本記事で、どうぞお楽しみください。
ギフップさん、本当にありがとうございました。長い長いインタビュー、本当におつかれさまでした。
http://gifupp.site/2019/08/22/sekiaiko/
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